「お局さん」が生まれてしまう理由はたぶん

当人の意図の有無に関わらず,「彼女(彼)に意見することでもたらされる組織と個人の利益よりも,同調しておけば防げる個人の損失のほうが大きい」と思わせているから. 人は利益よりも損失を過大に見積もるし,組織の利益より個人の利益の方を優先したがるのが普通だ.

一番わかりやすいのがお局さんだが,組織の種類や規模を問わず,「関わると/怒らせると面倒」と思われている人が組織の中で発言力を高めることはよくある.


真に独裁的で上意下達な組織でない限り,組織のあらゆるところで話し合いが行われる. それぞれの意見を集約し,一人では辿りつけなかった最良のアイデアにたどり着いたり,あるいは全員が受け入れられる妥協点を見出すというのが健全なプロセスだが,実際にはそううまくはいかない.

お局さんタイプの女性を例に挙げれば, 「感情的で,話の内容に無関係なことを持ちだしたり,個人攻撃に走ったり,話が終わってからもネチネチと攻撃してくる.単純に口数が多すぎて他人の話を聞かない.噂・陰口・詮索好き.愚痴っぽい.派閥を作りたがる」こういう人とはできるだけ関わりたくないし,万が一にも標的にされたくない.情熱を持って話し合いに参加している人というのは大体において少数派で,それほど情熱的でない多数派にとっては,自分の意見を表明することよりも,標的にされないことのほうが明らかに重要である.標的にされないためには黙っておくか,件のお局さんタイプに同調しておくのが正解. こうしてお局さんタイプの言うことは常に正しいものとなる.

たぶん重要なのは,お局さんタイプは見方によっては魅力的な姉御肌(もしくはアニキ肌)だということ(ただの嫌な人ではお局さんにはなれない).感情豊かで情報通で,意志と気が強く,味方に優しい.しかも組織の多数派が彼女に同調している.だから批判しにくい.新入りは早々にお局さん派に抱き込まれ,お局さんはますますお局さんと化し,上司までがお局さんの顔色を伺うようになる.

男性にもこのタイプはよくいるので,女性の場合のみ「お局さん」という名前が付いているのは不公平な気がする.


お局さんタイプへのベストな対処法は未だに分からないが,

個人としては「敵意は微塵もない」ことをこれでもかと表明し,個人攻撃をなんとか受け流しながら相手の意見に耳を傾けるという高度なことをすればマシになるだろうか.

組織としては,あらゆる話し合いは誰かが誰かを言い負かす場ではないことを徹底して周知するとともに,組織の全構成員とは言わないまでも,大多数が情熱を持てる環境を作ることだろうか.情熱を持っている人には個人攻撃も陰口も派閥もあまり通用しないので,お局さんタイプもお局さんになりきれない.

(自分自身が特別お局さんに苦しめられた経験があるわけではないので,「そんな甘いもんじゃない!」と言われるかもしれない)


このように考えると,そもそも組織にお局さんが生まれてしまうことは構成員にそれほど情熱がない(=イケてない組織になっている)ことを示しているのだろうか.